近江八景のうち「唐崎の夜雨」「堅田の落雁」をご紹介してきましたが、今回は『瀬田の夕照(せたのせきしょう)』をご覧いただきます。

瀬田の唐橋は、日本三大名橋のひとつとして広く知られており、古くから
「唐橋を制する者は天下を制す」とまで言われたほど、東国と京の都を結ぶ要衝として重要な役割を担ってきました。

また「武士(もののふ)の 八橋(やばせ)の舟は速けれど 急がばまわれ 瀬田の長橋」と詠まれたこの橋は、まさに『急がばまわれ』の語源となったことでも知られています。

古代から続く歴史の流れの中で、夕映えに染まる瀬田の唐橋は、今もなお人々の記憶と詩情を呼び起こしています。

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「瀬田の唐橋」
曇り空の下、静かに流れる瀬田川。
古より人々の往来を支えてきた唐橋は、今も変わらぬ姿で街の風景にとけ込み、
車の音に交じる川のせせらぎが、過ぎゆく時の重みを語りかけています。
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橋の下を静かに流れる川の流れ
『声なくて 流るる水に 耳澄まし 夕照染める 川のささやき』
絶えず流れる瀬田川は、夕照の色と共に言葉なき歌を奏でている。
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橋の上空を染める夕焼け空と影絵のような橋の輪郭
『沈みゆく ひかりを映す 橋の影   人も思ひも 夕にほどけぬ』
暮れなずむ空に溶ける、瀬田の古橋。沈黙の光が、時の記憶をなぞります。
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橋の欄干越しに見える夕陽と水面の輝き
『照り返す 水にゆらめく 夕の色  昔をしのぶ 瀬田の流れに』
きらめく水面に映るのは、過ぎし日々のことか、今を生きる私たちの想いなのか。
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夕暮れの空を背に、静かに佇む橋。
木の手すりと橋を支える柱の力強さの中に、人々の往来と時の流れが滲む。
あの日見た町並みも、柔らかな光に包まれて、どこか懐かしい。
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何度も戦のために落ちながらも歴史を乗り越えてきた瀬田の唐橋、今は静かに時の流れを見守っています。
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橋の遠景と夕暮れ、空に溶ける瀬田の唐橋
『沈みゆく 色に橋あり 夢のごと  光と影の 境を渡る』
形あるものが、色に溶けていく瀬田の夕照は、記憶の奥にしずかに残ります。

【浮世絵風】
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昔の浮世絵風にして見ました。古風なイメージが蘇っています。
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この橋を渡ると間もなく大津宿。京の都はもう目と鼻の先。さぞ旅人達の心も弾んだことでしょう。
東海道53次最後の宿場「大津宿」で、旅の疲れや汚れを落とした翌日の朝、着物を取り替えて心を弾ませながら三条大橋へ向かいます。
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静かな水面に架かる橋の構造美、手前の木々のシルエット、そして遠景の山々が柔らかな黄金の光に包まれ、まるで時間が緩やかに流れているかのような雰囲気です。